• TOP
  • Column
  • 地域の医療崩壊、どう防ぐ!?~会派で取り組んだ医療問題~
Column コラム

2025.12.29

地域の医療崩壊、どう防ぐ!?~会派で取り組んだ医療問題~


こんにちは、新風唐津の甲斐田です。
時が経つのは早いもので、年の瀬になってまいりました。今年は、1月に選挙、はじめての議会と学ぶことが本当に多い一年でした。
中でも、会派で取り組んだ、医療問題。地域の医療問題が深刻化する中、先日、唐津市議会でも地域の医療崩壊を防ぐために、「地域医療の拡充を早急に求める意見書」を取りまとめ、国に提出しました。

中でも、個人の議案質問として「小児科」問題を、会派では、特に「周産期医療(産科)」(=妊娠22週から出生後7日未満の「周産期」における母体・胎児・新生児への総合的な医療)にフォーカスし、取り組んできました。

というのも、今、唐津は「小児科」「周産期医療」共に、とても危機的な状況にあるからです。

▼唐津の小児科の現状

現在、2024年、人口10万人あたり小児科数が全国平均が約16件のところ、現在、唐津市は「小児科」と看板をあげている病院は3件のみで、小児科も対応できる病院と合わせて、市内は計9件となっています。

私も子育てしている中で、最近、行きつけだった小児科が閉院し、子供を病院に連れていくとその待ち時間の長さに驚かされます。あまりの長さに、医療の受け控えも出てくるのではないかと心配するほどです。一方で、6月の議案質疑でも取り上げましたが、現在唐津市は、唐津赤十字病院の地域連携小児救急センターの維持継続のため、夜間の小児科救急医療の赤字を一部補填している状況です。

▼唐津の産婦人科の現状

現在、唐津にある産婦人科は、現在2院のみとなっています。そして持病があったり高齢出産など「ハイリスク出産」対応は、唐津赤十字病院のみです。唐津赤十字病院の産科は、必要医師数5名に対し3名の医師しかおらず、夜勤など計60回のオンコールを3名で回すという、過重労働が常態化しています。更に、産婦人科医の半数以上が高齢者となっており、このままでは唐津の周産期医療が崩壊しかねない状況なのです。この点ついては、今年9月議会で、井手議員、松本議員が一般質問を行い、今後の行政フォローについてお願いをしたところです。

佐賀県の北部医療圏を支える唐津赤十字病院

▼小児科・産科なぜ医師不足深刻化?

地方における医師不足はどの分野もあることなのですが、特に、小児科、産婦人科が何故、深刻なのか?

まず小児科は、子供の人口の減少で患者数が減っている上に、その報酬体系が赤字体質になりやすいこと、産科は、いつ子供が生まれるかわからないという意味では、過酷な労働環境になりやすいということ、更にトラブルがあると「訴えられるリスク=訴訟リスク高い」と言われています。

そうしたことから、どの分野の医者になるか?を選ぶ際に、そもそも成り手が少ない上に、報酬や研修や研究環境など、より環境の良い都市に医師が集中することから、地方での病院不足、人手不足が深刻化しているのが現状です。

▼医療問題、突破口への提言

まずは、「医療診療報酬」については、国による政策による部分が大きいため、それ以外に、何か独自に地方自治体や病院ができることはないか?ということにフォーカスを当てた提言をしたいと思います。

まず、小児科です。

小児科の一次窓口となる個人院については、子供の数が少ないため、採算が・・・という事がありますが、唐津の場合は、人口に対して、病院が少なくなりすぎているので、マーケット的には、きちんと当たり前に小児科が開院すれば、経営が軌道にのる可能性は高いです。
そこで、唐津市ができることは、「開業支援」があります。それは、病院開業時に金銭的なインセンティブを提供するだけではなく、どういった場所で開業した良いか、暮らす場所はどんなところがよいか、子育てや生活が安心してできる環境は?など、新しい医師が地域になじんでいけるような移住支援やフォローが鍵になると思います。

一方、唐津市に加え玄海町を含む北部医療圏のハイリスク出産を支える、唐津赤十字病院の医師不足は、例えば同じ赤十字病院でも、佐賀市や福岡市と比べ唐津市は報酬が低いという点については、「報酬をあげる」という事は重要な要素です。ですが、報酬をあげれば医師がくるか?という単純な問題でもないようです。

勤務医の方に、大学病院や都市が好まれる理由をヒアリングしたところ、

①学会への出席やスキルアップの機会が充実している
②医師が充足し、ワークライブバランスが取りやすい

という事があるそうです。周産期に限らず、地方の病院がこれから医師を獲得していくためには、これらの課題を乗り越えければいけません。唐津は、幸い、学会の開催や高度な医療機関の多くある福岡へのアクセスがよく、一方でデジタル環境の進化により、オンラインで学会や研修の参加が可能な時代になる中、病院が意識的にこれらの機会や時間を創出することが求められていることが分かりました。

次に、医者のワークライフバランス…、言うは易しで、本当に難しいテーマですが、外科医であっても完全シフト制を実現するなど、富山大学病院の先進的な取り組みが記事として特集されていましたので、下記ご参考ください。

「長時間手術でも交代制」富山大学病院が実現した外科医の働き方改革で女性医師が活躍。深刻な医師不足の中で生まれた「完全シフト制」

労働に見合う報酬で、スキルアップなど自己研鑽ができ、ワークライフバランスを実現できる。そういう病院であれば、例えば、「稼ぎたい」という目的が大事な医師の獲得は難しくとも、「自分の経験や知識、技術を人助けのために活かしたい」という医師が来てくれる可能性は十分にあります。

また、地方病院=大変、重労働、低賃金という、定着したイメージを抜本的に変えていく事も、採用にとって大切な要素と言われています。 それは、医師のみならず看護師不足にも共通する事かもしれません。下記は、病院のイメージやブランディングから採用を見直した、島根大学の取り組みの事例です。

毎年看護師が100人辞めていく…そんな私立病院の人手不足を一発解消した応募殺到の”全く新しい採用形態”

▼自治体の役割は?

こうしてみると、医療問題は、自治体による病院の赤字補填や経営支援などの補助金で、一部の解決はできることもありますが、根本的な解決には、組織改革に取り組む病院の覚悟も必要になってくることが見えてきます。

しかし、人手不足の病院では、日々目の前のことをやり遂げることが精いっぱいという現実もあります。そこでの自治体の政策として、先進的取り組みや組織改革を行う病院を研究し、例えば、先進事例の紹介や、新しい体制を整えるイニシャルコストの支援経営改善のフォローアップなどが有効な政策となると思います。

その他、医師の訴訟リスクについては、大きな病院は対応する体制がしっかりしているのかもしれませんが、個人病院にとっては、大変な負担です。それを気軽に相談できたり、フォローする体制や窓口を設置することも行政支援でできることの一つかもしれません。

▼AIやデジタル技術との共存

最後に、AIやデジタル技術の驚くべき進化がある中で、医師・看護師・医療スタッフ不足の課題を解決してくれることも出てくると思います。例えば既に行われている医療事務などの業務効率化にとどまらず、看護師や医師のエージェントを育てることで、少人数でも実現できる病院運営は、これからますます進化していくことでしょう。

これは未来を考えるうえで、本当に重要なテーマだと思っています。何故なら、日本はこれから、人口が減り続け、どの地域も医師不足となるからです。様々な工夫や改善をして一時的に解決できることもあると思いますが、限られた人員に対して、地域が医師の獲得競争をし続けることに未来はあるのか?と問われると、それ以外の選択肢も本気で考え、医療崩壊を起こさない努力と共に、新しい時代への準備をしなければならないと感じています。

今回は、小児科、産婦人科をフォーカスしましたが、医療については、無医村問題、そこから派生して介護、福祉…人が健康に幸せに生きるためにベースとなるサービスを守り持続可能に運用、進化させていくことは重要な行政の役割です。引き続き、これらの分野を会派で学び、有効な政策の提言につながるよう取り組んでいきたいと思います!

ーーーーーーーーー
文責/甲斐田晴子(プロフィール
公式WEBサイト
公式Youtube公式Facebook
公式Instagram公式LINE