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Column コラム

2026.08.22

交通は、社会インフラ。長野県視察で感じた、唐津市との違い

こんにちは、甲斐田です。今回は、8月2日から4日までの3日間、視察研修で長野県の安曇野市、松本市、塩尻市のレポートを書いていきたいと思います。今回、3市に共通する研修テーマは、ずばり「交通政策」。

そのほかにも、

  • 安曇野市では「森林政策」
  • 松本市では「中心市街地活性化」
  • 塩尻市では「市民交流施設」

について、それぞれ先進的な取り組みを学びました。

本当に充実した、学びの多い3日間でした。

なお、今回お世話になった安曇野市では、その後、大雨による土砂災害などが発生したとのニュースが届いています。
被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
一日も早い復旧・復興をお祈りいたします。

今回、特に報告したい「交通政策」

今回の視察で、私が特に強く感じたのが「交通政策」の重要性です。唐津市にとっても、交通は非常に大きな課題です。
バス、電車、タクシー、船など、私たちの地域にはさまざまな交通手段があります。
しかし、人口減少とともに利用者は減少しています。特にバス路線の廃止や減便などによって、

「移動する手段がなくて困っている」

という声を、多くの市民の皆さんからいただいています。

一方で、現在の公共交通を維持するために、唐津市が負担している金額も決して小さくありません。
バスの運行維持にかかる補助金は、総額約2億3,500万円。その内訳は、唐津市が約2億2,000万円、玄海町が約1,500万円です。
さらに、7つの離島航路には、総額約2億8,000万円が投入されています。それでも、例えばバス会社の赤字は約2億8,000万円。補助金を差し引いても、約4,500万円の赤字が残ります。

私自身も会社を経営していますが、別の事業で得た利益によって、これだけの赤字を支え続けているということは、本当に大きな社会貢献だと思います。頭の下がる思いです。

「移動」を、これからどう支えるのか

しかし、これからさらに難しい問題が待っています。
人口減少と高齢化が進めば、

  • 車を運転できない人
  • 車を持たない人
  • 移動に不安を抱える高齢者

は、今後ますます増えていくことが考えられます。その一方で、交通事業者は慢性的な運転手不足に直面しています。さらに、燃料費や人件費の高騰によって、民間事業者の経営環境は厳しさを増しています。もちろん、市の財政にも限りがあります。

では、これから私たちは、市民の「移動」をどう支えていけばいいのでしょうか。

これは、唐津市にとって非常に大きな宿題です。

長野県3市から学んだこと

今回の視察では、そのヒントとなる取り組みを数多く学ぶことができました。

安曇野市:「あづみん」

安曇野市では、高齢者や障がい者、学生など、いわゆる「交通弱者」に焦点を当てたデマンド交通「あづみん」について学びました。

松本市:「公設民営」の路線バス

松本市では、市が公共交通を設計し、民間事業者に運営を委託する「公設民営」の路線バスについて学びました。

塩尻市:「のるーと」

塩尻市では、一律の低料金で幅広い世代の移動を支えるデマンド交通「のるーと」について学びました。

「あづみん」や「のるーと」は、唐津市の「ちょいそこ」に近い仕組みです。予約すると迎えに来てくれる、いわば定額タクシーのような交通サービスです。

単純に利用者数だけを比較することはできませんが、人口約11万人の唐津市の「ちょいそこ」の利用者が約1万8,000人であるのに対し、人口約10万人の安曇野市では「あづみん」が10万人を超え、人口約6万5,000人の塩尻市では「のるーと」が約9万人に利用されています。

もちろん、それぞれ地域の規模や地理的条件、制度設計が異なるため、数字だけで優劣を判断することはできません。しかし、そこから見えてきたものがあります。

「市民の移動は、社会インフラ」

3市の交通政策は、それぞれ地域事情に合わせて異なるものでした。しかし、私が共通して感じたのは、

「市民の移動を確保することは、社会インフラを守ること」

という、行政としての強い使命感です。課題を待つのではなく、地域の実情を把握し、「どうすれば市民の移動を確保できるのか」を行政が主体的に考える。そして、実証実験を行い、シミュレーションを重ねながら、市民への認知と活用のためにより良い仕組みをつくっていく。その姿勢に、大きな感銘を受けました。

唐津市だからこそ、難しい。でも、避けては通れない

唐津市は、長野県と違い、離島を抱え、市域も広く、生活拠点も分散しています。
そして、人口減少や高齢化に加え、

  • バスや鉄道など複数の交通手段
  • 運転手不足
  • 燃料費・人件費の高騰
  • 財政的な制約

など、交通政策を考えるうえで、どの地域でも直面している人手不足や燃料の高騰、財政的な制約を唐津市も抱えています。なので、本当に難しい政策である一方で、これから避けては通れない課題でもあります。だからこそ、まさに今、「公」の力が試されていると思います。

「公設民営」は、唐津市へのヒントになる

そこで、特に印象に残ったのが、松本市の「公設民営」という考え方です。

唐津市の複雑な交通体系を、個々の交通手段ごとに考えるのではなく、市全体の「移動」「社会のインフラ」という視点から、一体的・網羅的に捉えていく。

そのうえで、行政が公共交通の全体像を設計し、民間の力やノウハウを生かして運営していく。これは、唐津市にとっても大きなヒントになるのではないかと思います。

公共交通は、単なる「移動手段」ではありません。

  • 通院する。
  • 買い物に行く。
  • 学校に通う。
  • 仕事に行く。
  • 人に会いに行く。

こうした、当たり前の日常を支えるのが公共交通です。

今回の視察では、長野県3市のさまざまな取り組みを直接見て、この認識を改めて持つことができました。そして松本市のほか、安曇野市、塩尻市を通して、例えば、24時間可能な予約システムや、予約から配車、配車から送迎まで最適な提案窓口にAIを導入し、市民満足度を維持しながら、運営のための効率化や経費の最適化をし、人手不足に取り組んでいる工夫については、唐津にそのまま活かせる内容だと思いました。

地域の交通政策の在り方は、既に唐津に暮らしている市民の皆さんだけではなく、移住を考えるうえでも、その町の魅力を高める大切な役割を担っています。

地域が違えば、正解も違います。一方で

「行政がどう課題を捉えるのか」
「市民の移動をどう守るのか」
「限られた財源をどう生かすのか」
「民間と行政がどう役割分担するのか」

その問題意識に基づいた、長野県の様々な工夫や手法は、応用できる活きた事例でした。

市民の皆さんが、住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるように。そして、暮らしやすい環境がまた新しい人を呼び込むことに繋がるように、今回の視察の成果を、唐津の未来の交通政策にしっかりと繋げていきたいと思います。



文責/甲斐田晴子(プロフィール
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